食料自給率。なんとなくわかっているようでわかっていない。食料?食糧?うーん。
いやいや、普通に考えて、国民をどれだけ食わせられるか、という指標ではないか?
しかしまてよ?食料自給率100%とは、お腹いっぱいの状態?それとも腹八分目?ってか、計算式はどうなっているの?ピーマンが嫌いな人はどうなる?
取り急ぎ農水省のHPを拝見しても、ぶっちゃけ意味がわからなかったので、まとめてみた。
【簡単に言えばこんな感じ】
食料自給率の表し方は、品目別自給率(=国内生産量/国内消費仕向量)と総合食料自給率の2種類。総合食料自給率には、カロリーベース(=国内供給カロリー/全カロリー)と生産額ベース(=国内生産額/国内消費仕向額)の2種類が存在し、それぞれ法定目標が置かれている。
・カロリーベース:(現状)38%→(2030年目標)45%
・生産額ベース :(現状)66%→(2030年目標)75%
1.食料自給率の考え方
わからない時はネットで調べるのが早い。
とりあえず「食料自給率」で検索すると、農水省のHPが出てきた。
1. 食料自給率とは
食料自給率とは、我が国の食料供給に対する国内生産の割合を示す指標です。
その示し方については、単純に重量で計算することができる品目別自給率と、食料全体について共通の「ものさし」で単位を揃えることにより計算する総合食料自給率の2種類があります。このうち、総合食料自給率は、熱量で換算するカロリーベースと金額で換算する生産額ベースがあります。
難しいが、1文目は理解できる。食料供給に対する国内生産の割合であるから、100%はみんながお腹いっぱいの状態ということではなく、スーパーとかで売られている食料品がすべて国産の状態をいうのだろう。
問題は2文目だ。重量?共通の「ものさし」?そしてその「ものさし」にはカロリーベースと生産額ベースがあるらしい。
そのうえ、そもそも食料自給率には品目別自給率と総合食料自給率の2種類が存在するようだ。
▲こんな感じ?
それでは、それぞれの計算方法を確認してみようと思う。
1−1.品目別自給率
定義は農水省のHPに書いてあるままである。
以下の算定式により、各品目における自給率を重量ベースで算出しています。なお、品目別自給率では、食用以外の飼料や種子等に仕向けられた重量を含んでいます。
品目別自給率=国内生産量/国内消費仕向量
(国内消費仕向量=国内生産量+輸入量-輸出量-在庫の増加量(又は+在庫の減少量))例)小麦の品目別自給率(令和元年度)
=小麦の国内生産量(103.7万トン)/小麦の国内消費仕向量(632.3万トン)=16%
わかる。言いたいことはよくわかる。しかしこれだけ言われては、今自分の目の前にある食べ物の自給率を計算しようなどとは到底思えない。代入すれば終わるレベルの簡単なものが欲しいのだ。
大事なのは多分これだ
国内生産量/国内消費仕向量
国内消費仕向量=国内生産量+輸入量-輸出量-在庫の増加量(又は+在庫の減少量)
まず国内消費仕向量 の読み方がわからないので検索してみたら、こくないしょうひしむけりょうと読むことが判明した(英語だとSupplies for domestic consumptionとなり、わかりやすい)。食料需給関連用語
そして意味もよくわからなかったので調べてみたら、これまた農水省のHPが登場。
Q2.「国内消費仕向量」とはどのような量ですか。
「国内消費仕向量」とは、1年間に国内で消費に回された食料の量(国内市場に出回った食料の量)を表す量で、国内生産+輸入-輸出±在庫増減で計算されます。なお、国内消費仕向量には、食用以外の飼料や種子に仕向けられた数量も含まれています。
国民全員が好き嫌いせずに残さずキチンと食べ切ったかなんて誰もチェックしていないから、きっと、ここでいう「消費」とは、国内で食べられた量ではなくて、消費者に買われて行った食糧のことを言っているのだろう。すると、スーパーでレジに通された食料の重さを分母として、それに占める国内生産品の重さを分子とした値、すなわち国内で購入される特定の食料品のうち、国産である割合はどのくらいか(重さベース)?を測る指標なのだ。
1−2.総合食料自給率
こちらも農水省のHPに定義が記載されている。
食料全体について単位を揃えて計算した自給率として、供給熱量(カロリー)ベース、生産額ベースの2とおりの総合食料自給率を算出しています。畜産物については、輸入した飼料を使って国内で生産した分は、総合食料自給率における国産には算入していません。
1−2−1.カロリーベース
カロリーベース総合食料自給率は、基礎的な栄養価であるエネルギー(カロリー)に着目して、国民に供給される熱量(総供給熱量)に対する国内生産の割合を示す指標です。
カロリーベース総合食料自給率(令和元年度)
=1人1日当たり国産供給熱量(918kcal)/1人1日当たり供給熱量(2,426kcal)
=38%分子及び分母の供給熱量は、「日本食品標準成分表2015」に基づき、各品目の重量を熱量(カロリー)に換算したうえで、それらを足し上げて算出しています。
計算式どころか、なんと答えが書いてあるが、式だけ抜き出せばこうだ。
総合食料自給率は特定産品を抽出せず、全ての食料をひっくるめて、ひとつの「ものさし」で自給率を推し量る指標であるから、誰がどう足掻こうと、令和元年度のカロリーベース総合食料自給率は38%なのであるが、供給熱量(=カロリー)は「日本食品標準成分表2015」に基づいているとある。令和元年度の指標であれば、同2018に基づかねばならないのでは?
…と思い調べてみたら、日本食品標準成分表は文科省が5年に一度改訂しているとのこと。
日本食品標準成分表2015年版(七訂)について
文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会では、日本食品標準成分表を5年ぶりに改訂しましたので公表します。今般の改訂は、15年ぶりとなる収載食品の拡充や、新たに炭水化物成分表を作成するなど、大幅なものとなりました。
なお、改訂期以外でも、所々修正をいれている箇所があり、それについても公表されているが、その説明が極めて専門的だったため省くことにする。要は5年に1回なのだ。
この指標に、1年間で1人1日あたりの消費熱量(カロリー)をあわせる(=平均的なヤツがいったいどういう食糧をどんな割合で食べているのか)ことで、毎年のカロリーベース自給率が算出されるわけだ。
昨今、食品ロスが騒がれているが、当然ながらみんながどれだけ食べ物を残しているのかなんて誰もチェックしていない。したがって実際の分母は少なくなるはずである。
したがって、カロリーベースの食料自給率は、実態よりも低く算出されると想定される。
1−2−2.生産額ベース
これもまた農水省のHPに定義が書いてある。
生産額ベース総合食料自給率は、経済的価値に着目して、国民に供給される食料の生産額(食料の国内消費仕向額)に対する国内生産の割合を示す指標です。
生産額ベース総合食料自給率(令和元年度)
=食料の国内生産額(10.3兆円)/食料の国内消費仕向額(15.8兆円)
=66%
分子及び分母の金額は、「生産農業所得統計」の農家庭先価格等に基づき、各品目の重量を金額に換算したうえで、それらを足し上げて算出しています。
こちらは、重量ベースに似た考え方となっており、量が金額に置き換わっている。
国内生産額/国内消費仕向額
分子及び分母の金額は、「生産農業所得統計」の農家庭先価格等に基づき、各品目の重量を金額に換算したうえで、それらを足し上げて算出
同じカロリーでも、毎日高級フレンチを食べている人と、牛丼を食べている人では、当然ながら金額が異なるので、より経済チックに算出するのが生産額ベースの指標だ。
…それは良いとして、カロリーベースでは38%だったのに、生産額ベースでは66%と、同じ『総合食料自給率』にもかかわらず数字にかなりの開きがある。これでは、日本の食料自給率が高いのか低いのかわからない。
確認してみたら、諸外国では生産量ベースの総合食料自給率を公表しているところが多いので、国際比較という観点、つまり、海外と比較して食料自給率が高いのか、低いのか、という議論は生産額ベースで行われることが多いと想定される。
2.どこまでが国内生産品なのか
と、このように、指標によって数値に差が生まれているから、数値が高いか低いかはあまり関係なく、よく言われているように、輸入に頼りすぎずに国内の農業守ろうよ、みたいなことが大切なのかもしれない。
一方で、(戦争が起こらないことを前提に)完全に自由貿易にしてしまって、比較優位の三品だけ生産し続ければオッケー!といった論もあるだろう。
どちらが良いか、というのはその時の情勢次第であるし、ぶっちゃけよくわからないのでここには論じないが、国の指標として、国内の農業従事者やそれに関連する方に向けた見せ方として、「農業政策これだけ頑張って成果出ました!」といえる数字作りはどのみち必要なのだろう。
農水省のホームページを見ると、食料国産率なる指標も出現するのである。
食料国産率は、我が国畜産業が輸入飼料を多く用いて高品質な畜産物を生産している実態に着目し、我が国の食料安全保障の状況を評価する総合食料自給率とともに、飼料が国産か輸入かにかかわらず、畜産業の活動を反映し、国内生産の状況を評価する指標です。令和2年3月に閣議決定された食料・農業・農村基本計画で位置付けられました。総合食料自給率が飼料自給率を反映しているのに対し、食料国産率では飼料自給率を反映せずに算出しています。
総合食料自給率では、家畜等の飼料が輸入に頼っていた場合は、国産と見なさないルールとなっていたが、それを実態を踏まえて見直しをすることで、分子が増大し、見かけの数字が大きくなる、というマジックだ。
実際に国内の生産者が汗をかいて生産しているのだから、まあ良いと思うのでこの辺にしておく。
ちなみに、例えば国産の野菜のタネが外国産である場合に、これを国産とみなさないことにすると、種子のおよそ9割は外国産であるから、野菜の自給率は10分の1となってしまう。
3.もっと知りたい人
恐れ入りますが、農水省のQ&Aをご覧ください。